病気やケガで休職・退職したとき、経済的な不安を減らしてくれる制度が「傷病手当金」と「特定理由離職者」の2つです。この記事では、私自身が適応障害で休職・退職した経験をもとに、それぞれの受け取り方と注意点を整理します。
※制度の内容は2026年7月時点の情報です。詳細は加入している健康保険組合・協会けんぽやお近くのハローワークでご確認ください。
経済的な命綱「傷病手当金」の受け取り方
休職中や退職後の生活を支える最大の命綱が、健康保険から支給される傷病手当金です。
基本ルールと支給額
傷病手当金は、病気やケガで仕事を休み、給与が支払われない期間について支給されます。仕事を休んだ日から連続する3日間の待期期間を経て、4日目以降の休んだ日に対して支給されるのが基本です。
支給される1日あたりの金額は、次の計算式で決まります。
支給開始日以前の直近12か月間の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30 × 3分の2
たとえば平均の標準報酬月額が26万円なら、26万円 ÷ 30 × 3分の2 ≒ 5,780円が1日あたりの支給額の目安です。同一の病気・ケガについては、支給開始日から通算1年6か月まで受け取れます。
退職後も受け取り続けるための条件
退職すると健康保険の資格を失いますが、次の条件をすべて満たせば退職後も継続して受給できます。
- 資格喪失日の前日(退職日)までに、継続して1年以上の被保険者期間があること
- 資格喪失日の前日(退職日)の時点で、傷病手当金を実際に受けているか、受けられる状態にあること
- 退職日に出勤すると、その時点で「働ける状態」とみなされ受給権が消滅するため、退職日は出勤しないこと
退職日の扱いを誤ると受給権を失ってしまうため、退職日を決める際は特に注意してください。
申請の流れ
- 加入している健康保険組合(協会けんぽ等)のウェブサイトから申請書をダウンロードする
- 労務不能(働けない状態)であった期間について、主治医に証明欄を記入してもらう
- 休んだ期間に給与を支払っていないことの証明を、会社(事業主)に記入してもらう
- 保険者に提出し、審査を経て指定口座に振り込まれる
傷病手当金は「過去の期間」に対して申請するものです。定期的に受診し、医師に「その期間は療養が必要だった」というカルテ記録を残してもらうことが、確実な支給への近道になります。
失業保険で損しないための「特定理由離職者」

自己都合で退職すると、通常は待期7日間に加えて給付制限が発生します(2025年4月以降の離職は原則1か月、過去5年に自己都合退職で2回以上受給資格決定を受けている場合や重責解雇の場合は3か月)。
しかし、体調不良が理由の退職では「特定理由離職者」に認定される可能性があります。特定理由離職者と判定されると、この給付制限自体がなくなり、待期7日間の終了後からすぐに失業保険を受け取れます。
特定理由離職者に必要な書類「就労可能証明書」
特定理由離職者として認めてもらうには、ハローワーク所定の「就労可能証明書」を主治医に記入してもらう必要があります。証明書自体はハローワークで無料でもらえますが、医師に記入してもらう際には3,000円〜5,000円程度の診断書料がかかるのが一般的です。
証明書で示す必要があるポイントは主に次の2点です。
- 退職日より前から、通院・治療を受けていたこと
- 前職の業務は難しくても、職種や環境を変えれば、現時点で一定時間以上就労可能な状態であること
「まったく働けない状態」の場合は失業保険ではなく傷病手当金の対象になります。「職種を変えれば働ける状態」まで回復していれば、ハローワークでのサポートを受けながら求職活動を進められます。
診察のための追加費用がかかることに戸惑うかもしれませんが、給付制限なしで失業保険を受け取れることや、後述する国民健康保険料の軽減を考えると、必要な手続き費用と考えて主治医に相談してみてください。
職業訓練との組み合わせ方(訓練延長給付)
失業保険を受給しながら、ハローワークの職業訓練(ハロートレーニング)を受ける選択肢もあります。
ハローワークの指示で公共職業訓練を受講することが決まると、所定給付日数を訓練終了前に使い切ってしまう場合でも、訓練終了日まで給付が延長される「訓練延長給付」という制度があります。主な条件は次のとおりです。
- ハローワークから職業訓練を受けるよう指示されていること
- 所定給付日数の3分の2を経過する前に訓練を開始すること
- 過去1年以内に公共職業訓練を受けていないこと
新しい分野へキャリアチェンジしたい人にとって、心強いセーフティネットです。
国民健康保険料が軽減される場合がある
倒産・解雇や、特定理由離職者に該当する一定の離職理由の場合、国民健康保険料の軽減措置が受けられることがあります。前年の給与所得を実際の30/100として計算するため、保険料負担がかなり抑えられます。
- 対象になるのは給与所得のみで、事業所得や不動産所得などは軽減の対象外
- 軽減が適用される期間は、離職日の翌日の月から翌年度3月まで
対象となる離職理由に該当するかは離職票の離職理由コードによって決まるため、届いた離職票を持って、お住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口に確認するのが確実です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 傷病手当金と失業保険は同時にもらえますか?
原則、同時には受け取れません。傷病手当金は「働けない状態」、失業保険は「働ける状態で求職中であること」が前提のため、対象になる状態が異なります。回復して働けるようになった段階で、傷病手当金から失業保険(特定理由離職者としての手続き)に切り替えるのが一般的な流れです。
Q2. 特定理由離職者になるのに、会社から発行される離職票の記載は関係ありますか?
関係します。離職票の離職理由欄と、就労可能証明書などの提出書類をあわせてハローワークが判断します。実際の退職理由と離職票の記載が違う場合は、ハローワークの窓口で事情を説明し、証拠になるものがあれば提出してください。
Q3. 就労可能証明書は必ず必要ですか?
体調不良(病気・ケガ)を理由に特定理由離職者としての認定を求める場合は、原則として必要です。ハローワークによって求められる書式や運用が異なることがあるため、事前に管轄のハローワークへ電話で確認しておくとスムーズです。
Q4. 傷病手当金の申請はいつまでできますか?
傷病手当金を受ける権利は、支給日ごとにその翌日から2年で時効になります。さかのぼっての申請も可能な期間ではありますが、書類の準備に時間がかかることもあるため、早めの申請をおすすめします。
Q5. 国民健康保険の軽減は自動的に適用されますか?
自動適用ではありません。お住まいの市区町村の国民健康保険窓口で、離職票(雇用保険受給資格者証)を持参して申請する必要があります。手続きを忘れると軽減を受けられないため、国保への切り替え時に必ず確認してください。
こんな人におすすめ
- 体調不良で休職・退職し、生活費の不安を抱えている人
- 「自己都合退職だから給付制限は仕方ない」と思い込んでいる人
- 主治医に何を証明してもらえばいいかわからない人
- 退職後、職業訓練を受けながら新しい分野に挑戦したい人
私自身が休職から退職に至った経緯や、離職票が届かないときの対応はこちらの体験談に、失業保険の申請手続き全体の流れは失業保険(雇用保険の基本手当)申請ガイドにまとめています。
まとめ
体調を崩しての退職は、お金の不安がいちばん大きくなりがちです。ですが、休職中・退職直後は傷病手当金、回復してからは特定理由離職者としての失業保険、必要に応じて職業訓練という順番を知っておけば、一つずつ着実に生活を立て直せます。焦らず、使える制度を味方につけてください。
メンタル不調からの再就職を支援する就労移行支援サービスの比較もあわせてご覧ください。


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