病気で仕事を辞めたあと、「少し落ち着いたら、何か学び直したい。でも、体調も収入も不安で、何から確認すればいいのか分からない」と感じている方は多いと思います。この記事では、国の職業訓練を「申し込む前」に知っておきたい制度の考え方と、確認したいことを整理します。
※制度の内容は2026年10月時点のものです。個別の状況によって扱いが変わるため、最終的な判断は、お住まいの地域を管轄するハローワークと主治医にご確認ください。この記事は一般的な情報と、運営者の体験をまとめたものです。
病気で退職したあとでも職業訓練を検討できる?
結論から言うと、病気で退職した方も、職業訓練を検討することはできます。ただし、「今すぐ受けられるか」は、体調や、いま受けている給付の種類によって変わります。
国の職業訓練(ハロートレーニング)は、ハローワークに求職の申込みをして、「働く意思と能力がある」と認められた方が前提の制度です。まだ療養が必要な時期に、無理に申し込む必要はありません。回復してから申し込む選択肢も、十分にあります。
私自身は、適応障害で退職したあと、失業保険を受けながら、約半年間、Webマーケティングを中心とした職業訓練を受けました。当時を振り返ると、「すぐに次の仕事を決める」のではなく、「治療の延長としての学び直し」という感覚で制度を使えたことが、大きかったと感じています。詳しくは、退職後、すぐに転職活動をすべき?私が「学び直し」を選んだ理由に書いています。
療養中と、働ける状態に回復したあとの違い
職業訓練や失業保険は、「働ける状態かどうか」が土台になっています。まず、状態によって何が変わるのかを整理します。
| 状態 | 確認したいこと |
|---|---|
| まだ療養が必要で、すぐには働けない | 失業保険(基本手当)は、病気やけがのためにすぐ就職できない間は受けられません。受給期間を延長する手続きがあるため、早めにハローワークへ相談します。 |
| 回復してきて、働くことを考え始めた | ハローワークで求職の申込みをし、職業訓練を含めて相談します。主治医に、働ける状態かどうかを相談しておくと安心です。 |
| 働ける状態に回復して、訓練を始める | 出席のしやすさ(通学の頻度・時間)、訓練期間、体調に波があるときの対応を確認します。 |
失業保険の「受給期間の延長」:失業保険の受給期間は、原則として離職した日の翌日から1年間です。病気やけがで、その期間内に引き続き30日以上働けないときは、働けなかった日数分だけ受給期間を延長でき、延長できる期間は最長3年です。延長の申請では、医師の証明書などの書類が求められることがあります。申請の時期は、働けなくなった日の翌日以降、早めに行うのが基本です。手続きの期限や必要書類の細かい扱いは案内によって書き方が異なるため、管轄のハローワークで最新の内容を確認してください。
公共職業訓練と求職者支援訓練の違い
ハロートレーニングには、大きく分けて2種類あります。どちらを使うかは、雇用保険(失業保険)を受けられるかどうかなどで変わります。
| 公共職業訓練(離職者訓練) | 求職者支援訓練 | |
|---|---|---|
| 主な対象 | 主に雇用保険(失業保険)を受給している人(受給していない人が対象になる場合もあります) | 雇用保険を受給できない人(自営業を廃業した人、受給資格がない人など) |
| 訓練期間 | コースによって異なります。数か月程度のものから、1〜2年程度のものまであります。実際の募集期間や受講条件は、各訓練コースの案内を確認してください。 | 2〜6か月 |
| 受講料 | 原則無料(テキスト代などは自己負担) | 原則無料(テキスト代などは自己負担) |
| 主なお金の支援 | ハローワークから受講を指示された場合、訓練が終わるまで失業保険(基本手当)が続くことがあります。受講手当(1日500円、支給日数に上限あり)や通所手当が出ることもあります。 | 要件を満たすと、職業訓練受講給付金(月10万円)、通所手当、寄宿手当が支給されます。 |
| ハローワークでの手続き | 「受講指示」などの手続きがあります | 「就職支援計画書」の交付(支援指示)があります |
給付金の要件を満たさない場合でも、求職者支援訓練は無料で受講できます。申し込みの流れや給付金の要件の詳細は、ハロートレーニング(公共職業訓練)の申し込み方法で整理しています。
失業保険・傷病手当金・職業訓練受講給付金で確認すること
お金に関する制度は、名前が似ていて混乱しやすいところです。3つの制度で、まず確認したいことを分けておきます。
失業保険(基本手当)
- 「働ける状態」であることが前提です。病気やけがですぐに就職できない間は、受けられません。
- その間は、受給期間の延長を使う方法があります(前の章を参照)。
- ハローワークから職業訓練の受講を指示された場合は、所定の給付日数を使い切っても、訓練が終わるまで基本手当が続く「訓練延長給付」の対象になることがあります。受講指示を受けるには、訓練が始まる時期などに条件があるため、早めに相談してください。
傷病手当金
傷病手当金は、健康保険から、病気やけがで働けない間に支給されるお金です。一方、失業保険(基本手当)は、働ける状態で就職する意思のある方に支給されるお金です。
傷病手当金と雇用保険の基本手当は、支給される目的や要件が異なります。病気やけがで働けない状態なのか、就職できる状態なのかによって、確認すべき制度が変わります。
受給状況や退職後の経過によって取扱いが異なるため、傷病手当金については加入していた健康保険の保険者へ、雇用保険についてはハローワークへ確認してください。
また、傷病手当金を受けている期間に、職業訓練を受講できるかどうかについては、一般的な基準を示す公的な資料を、私は確認できませんでした。このため、この記事では「受けられる」「受けられない」とは書きません。受講を考えている場合は、健康保険の窓口、ハローワーク、主治医に事前に相談してください。
職業訓練受講給付金(求職者支援訓練)
- 雇用保険の受給資格がある間は、受給できません。
- 主な要件は、本人の収入が月8万円以下、世帯全体の収入が月30万円以下、世帯全体の金融資産が300万円以下などです。
- 訓練の実施日にすべて出席することが求められます。やむを得ない理由があり証明できる場合でも、8割以上の出席が必要です。
- 要件の一覧は、この記事の最後でご紹介する申し込み方法の記事にまとめています。
無理なく学び直すための訓練コースの選び方
病気から回復したあとは、「何を学ぶか」の前に、「今の体調で、続けられる形か」を先に考えるのがおすすめです。
- 通う頻度と時間帯:通学が前提か、オンライン・eラーニングを含むかを確認します。求職者支援訓練には、実施日が決まっていない科目を含むeラーニングのコースもあります。
- 出席のルール:求職者支援訓練で給付金を受ける場合は、訓練実施日にすべて出席することが原則です。本人の病気やけがは「やむを得ない理由」にあたりますが、医師の証明書などで証明する必要があります。体調に波がある方は、欠席したときの手続きを、事前にハローワークで確認しておくと安心です。
- 訓練期間:求職者支援訓練は2〜6か月、公共職業訓練はコースによって数か月程度から1〜2年程度までと幅があります。回復の状況に合わせて、無理のない長さを選びます。
- 学んだ先のイメージ:人気や就職率だけでなく、「回復したあとに、どんな働き方をしたいか」から逆算して選びます。
- 説明会・見学:多くのコースで、訓練実施施設の説明会や見学があります。雰囲気や通いやすさを、実際に確かめてから決められます。選考(面接・筆記試験など)がある点にも、注意してください。
費用の面では、国の職業訓練は受講料が原則無料です(テキスト代などは自己負担)。有料のスクールを検討する前に、公的な訓練で目的が叶うかどうかを、まずハローワークで確認してみてください。
運営者の職業訓練体験から伝えられること
ここからは、私自身の体験です。個人の体験であり、同じ結果を保証するものではありません。
焦らずに選べたこと。適応障害が理由の退職で、特定理由離職者として扱われ、給付制限なしで失業保険を受け取れました。収入がゼロにならなかったので、「早く次を決めなきゃ」と焦らずに、学び直しを選ぶ余裕ができました(詳しくはこちら)。
コース選びの軸は「在宅でできること」。回復の途中で、外に出ること自体に少し怖さがあったことと、育児を担う立場だったことから、私は在宅・eラーニングのコースを軸にしました。通学制の介護・福祉関係の資格コースや、技能系のコースも候補にはありましたが、通学が前提だったため、このときの軸とは合いませんでした(職業訓練、何を基準に選んだか)。人気や就職率だけでなく、「今の自分の状態で、無理なく続けられるか」という軸も、大事にしてほしいと思います。
キャリア面談が役に立ったこと。訓練の期間中には、キャリアコンサルタントとの面談を受ける機会がありました。自分の経歴を言葉にして話すことで、自分への理解が深まりました。また、長所の見つけ方や、履歴書・職務経歴書での書き方を、具体的に教えてもらえたことが助かりました(職業訓練で受けたキャリア面談、何が良かったか)。
ハローワークや主治医に確認したいこと
申し込みの前に、次の点をメモして相談すると、話がスムーズです。
ハローワークで
- 今の状況(療養中か、回復途中か)で、求職の申込みや職業訓練の相談ができるか
- 失業保険の受給期間の延長が必要か、必要な書類は何か
- 自分は、公共職業訓練と求職者支援訓練のどちらの対象になりそうか
- 職業訓練受講給付金の要件(収入・世帯・資産)を満たしそうか
- 気になるコースの出席ルールと、体調不良で休むときの手続き
- 受講指示が出せる時期の条件(失業保険を受給している場合)
主治医・健康保険の窓口で
- 就労や、訓練への通学が可能な状態かどうか(可能になる時期の見通し)
- 傷病手当金を受けている、または受ける可能性がある場合の、職業訓練との関係
- 失業保険の受給期間の延長に使う証明書類を書いてもらえるか
よくある質問
Q1. まだ療養中ですが、職業訓練に申し込めますか?
職業訓練は、「働く意思と能力がある」ことが前提です。まだ療養が必要な時期は、先に回復を優先し、失業保険の受給期間の延長なども含めて、ハローワークに相談してください。
Q2. 失業保険を受けながら職業訓練を受けられますか?
ハローワークから受講を指示された場合は、訓練が終わるまで基本手当が続く場合があります。受講指示には、訓練が始まる時期などの条件があるため、早めにハローワークへ相談してください。
Q3. 傷病手当金をもらいながら、職業訓練を受けられますか?
公的な資料で一般的な基準を確認できなかったため、この記事では断定できません。加入している健康保険、ハローワーク、主治医に、事前に確認してください。
Q4. 訓練の途中で体調を崩したらどうなりますか?
求職者支援訓練で給付金を受けている場合、本人の病気やけがによる欠席は「やむを得ない理由」にあたることがありますが、証明書類が必要で、出席率が8割未満になると給付金が支給されない場合があります。欠席するときは、事前にハローワークへ連絡して、手続きを確認してください。
Q5. 給付金の要件を満たさないと、訓練は受けられませんか?
求職者支援訓練は、給付金の要件を満たさない場合でも、無料で受講できます。
まとめ
病気で退職したあとでも、職業訓練は、回復の状況に合わせて検討できます。大切なのは、「今すぐ動くこと」ではなく、今の状態と使える制度を、一度整理することです。確認したいことをメモして、ハローワークや主治医に相談してみてください。
申し込みの流れや、給付金の要件の詳細は、ハロートレーニング(公共職業訓練)の申し込み方法で解説しています。失業保険の手続きは失業保険申請ガイド、傷病手当金との関係は傷病手当金の受け取り方と、退職後の失業保険で損しないための知識もあわせてご覧ください。
(この記事は一般的な情報と個人の体験をまとめたものであり、個別の制度判断を示すものではありません。具体的な手続きや受給の可否は、管轄のハローワークや健康保険の窓口にご確認ください。)


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