「辞めます」と伝えたら終わり、ではない。退職には、会社に返すもの、会社から受け取るもの、自分でやっておくべきことが意外なほどたくさんある。抜け漏れがあると、退職後の手続きが滞ったり、後々会社とのトラブルにつながったりする。ここでは、退職前に確認しておきたい項目を整理する。
1. 会社に返却するもの一覧
基本的に、次の3つに当てはまるものは会社に返却する必要がある。「会社から貸与されたもの」「社員であることを証明するもの」「会社の費用で購入したもの」だ。
具体的には、健康保険証、社員証・社章、名刺(自分の名刺・取引先からもらった名刺の両方)、通勤定期券、会社支給のパソコンやスマートフォン、社用車の鍵、制服や作業着、業務で使った書類や資料などが該当する。私物のパソコンを業務に使っていた場合は、業務データの返却または消去も必要になる。
返却するか判断に迷うものがあれば、自己判断で処分・持ち帰りをせず、必ず会社に確認するのが安全だ。
2. 会社から受け取るもの一覧(重要書類)
退職後の手続きに直結する書類なので、こちらは特に注意したい。

離職票: 失業保険の申請に必須。会社に発行義務があり、労働者から請求があれば発行しなければならないと法律で定められている。すぐに転職する予定がなくても、念のため発行を依頼しておくと安心だ。
源泉徴収票: 退職日から1か月以内に発行されるのが一般的。年内に再就職する場合は新しい勤務先での年末調整に必要になり、再就職しない場合は自分で確定申告をする際に必要になる。
雇用保険被保険者証: 転職先での雇用保険手続きに必要。会社が保管しているケースが多いので、退職時に必ず返却してもらう。
年金手帳(基礎年金番号通知書): 会社が保管している場合は退職時に返却してもらう。国民年金への切り替え手続きなどで必要になる。
最終月の給与明細: 交通費や残業代の精算、社会保険料・住民税の最終調整など、通常の月と異なる項目が含まれることが多い。源泉徴収票が届くまでの間、収入や税額を確認する資料として保管しておくとよい。
3. 退職前にやっておくべきこと
有給消化の計画を立てる: 残っている有給の日数を確認し、退職日までのスケジュールに組み込む。会社によって消化できる条件が異なる場合があるので、早めに相談しておくと調整しやすい。
業務の引き継ぎ資料を作る: 後任が決まっていなくても、引き継ぎ資料は作っておいた方がいい。退職後に問い合わせが来る事態を避けられる。
社内システムのパスワード整理: 自分しか把握していないパスワードやアカウント情報があれば、退職前に共有しておく。これを怠ると、退職後に会社から連絡が来る原因になる。
4. 直接やり取りしにくい状況にある人へ
ここまでは一般的な退職手続きの話だが、体調や状況によっては、これらのやり取りを対面や電話で行うこと自体が難しい人もいると思う。
私自身がそうだったように、メールや郵送だけでもこれらの手続きは進められる。ただし、離職票や源泉徴収票などは「請求しないと発行されない」場合もあるため、対面でのやり取りができない分、メールなどの文面で明確に依頼しておくことが大事になる。「〇〇の書類を郵送してください」と、必要なものを具体的に、記録に残る形で伝えておくと、後から「言った・言わない」のトラブルを避けやすい。
実は私自身、この「最初に伝えきれなかった」ことで苦労した経験がある。労災での休業からそのまま適応障害で出社できなくなったので、オフィスの自分の机には私物がそれなりに残っていた。ただ、最初のやり取りで何を送ってほしいか、何を送り返すべきかをきちんと整理して伝えられておらず、結果的に郵送を3回に分けてしまった。しかも着払いでのやり取りだったので、そのたびに余計な送料がかかったし、相手にも「また何か送るのか」という苛立ちを感じさせてしまったと思う。
今振り返ると、最初の連絡で「返却してほしい私物」と「受け取りたい書類」をリストにして、一度で済むように簡潔に伝えておくべきだった。対面でやり取りできない分、文章での伝え方一つで、相手の負担も自分の出費も大きく変わってくる。

こうしたやり取りすら難しいと感じる場合は、退職代行サービスを使うことで、これらの必要書類の請求も含めて代行してもらえる場合がある。
5. まとめ
退職は、意思を伝えて終わりではなく、返却物・受け取る書類・自分でやるべきことの3つを漏れなく確認して初めて完了する。特に離職票や源泉徴収票のような書類は、退職後の生活に直結するので、忘れずに請求しておきたい。
対面でのやり取りが難しい状況にある場合の考え方については、記事①や記事③でも触れている。
(この記事は一般的な情報整理を目的としたものであり、会社ごとの就業規則や個別の事情によって異なる場合があります。詳細は勤務先の担当部署にご確認ください。)
退職後の失業保険の手続きはこちらのガイドにまとめています。
有給休暇の消化や即日退職の法的な考え方はこちらの記事に、退職後の社会保険・税金の手続きはこちらのガイドにまとめています。


コメント