休職を検討する際、多くの人がつまずくのが「傷病手当金の申請書類、結局どう書けばいいのか分からない」という点です。様式は全4ページに分かれていて、記入する人(本人・会社・医師)もページごとに違うため、初めてだと戸惑って当然です。
この記事では、全国健康保険協会(協会けんぽ)の様式をもとに、各ページの記入内容と、実務上つまずきやすいポイント、差し戻し・不支給を避けるための注意点を整理します。※健康保険組合に加入している場合は様式が異なることがあるため、詳細は加入先の窓口で確認してください。
そもそも支給されるための4つの要件
書類を書く前に、まず支給要件を満たしているか確認しておきましょう。次の4つすべてに当てはまる必要があります。
- 業務外の病気やケガの療養であること(業務中や通勤中の傷病は労災保険の対象になります)
- 療養のために労務不能(仕事ができない状態)であること
- 連続する3日間の待期期間(公休日・有給休暇を含む)を経て、4日目以降に休んでいること
- 休業期間中に給料が支払われていないこと(支払われていても、傷病手当金の日額より少ない場合は差額が支給されます)
支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月が上限です。また、請求できる権利は、労務不能だった日ごとに翌日から2年で時効消滅するため、あまり先延ばしにしすぎないよう注意してください。
申請書は全4ページ、記入する人がそれぞれ違う
協会けんぽの「健康保険傷病手当金支給申請書」は次の4ページで構成されています。
- 1ページ目(被保険者記入):氏名・生年月日・住所・振込先口座など基本情報
- 2ページ目(被保険者記入):休業期間、仕事内容、傷病名、発病の原因、他の給付(年金など)の受給状況(退職後の申請の場合も、退職前の仕事の内容を「経理担当事務」「プログラマー」など具体的に記入します)
- 3ページ目(事業主記入):出勤状況の証明、休んでいない日の賃金支給内訳
- 4ページ目(療養担当者=医師記入):傷病名、労務不能と認めた期間、診療内容の意見
つまり自分ひとりで完結する書類ではなく、会社(人事・上司)と主治医の協力が必須ということです。休職を伝えるタイミングで、会社側にもこの申請書があることを共有しておくとスムーズです。
協会けんぽの申請書では、申請期間は暦で3か月以内とし、3か月を超える場合は申請書を分けて申請します。申請書は、申請期間が経過した後に提出します。初めて申請する場合は、待期完成(3日間連続して休んだ日)の初日から申請します。
1ページ目で特につまずきやすい点
- 健康保険証や「資格情報のお知らせ」に記載の記号・番号を記入すれば、マイナンバーの記入は不要
- 振込先はゆうちょ銀行を指定する場合、通常の記号番号ではなく振込専用の「3桁の漢数字支店名」と「7桁の口座番号」が必要
- マイナポータル等で公金受取口座を登録済みなら、口座情報の記入自体を省略できる
- 申請書1ページ目の「公金受取口座の利用について」で「1.希望する」を選んだ場合は、口座情報の記入は不要です。「2.希望しない」を選んだ場合は、申請者本人名義の口座を記入します(協会けんぽの場合)
- 個人番号(マイナンバー)は、記号・番号が不明な場合のみ記入します。記入した場合は、本人確認書類の添付が必要です
3ページ目・4ページ目で最も返戻(差し戻し)が起きやすいポイント
実務上もっとも多い差し戻し理由は、会社が証明する出勤状況(3ページ目)と、医師が証明する労務不能期間(4ページ目)が食い違っているケースです。例えば医師が「10月1日〜10月31日は労務不能」と書いているのに、会社側の出勤簿に「10月15日出勤」の印がついていると、審査側はどちらが正しいか確認のため書類を差し戻します。
申請前に、休業期間の日付が会社側の記録と医師の証明とで一致しているか、一度自分の目でも確認しておくと安心です。
3ページ目・4ページ目のそのほかの注意点
3ページ目(事業主記入):3ページ目は、お勤め先の事業所に証明を受けます。資格喪失日以降の期間に関する申請では、空欄で提出します。証明の日付は、申請期間が経過した後の日付を記入してもらいます。出勤簿や賃金台帳の写しなどは添付しません(協会けんぽの場合)。
4ページ目(療養担当者記入):病院を転院した場合は、それぞれの病院で療養担当者(医師等)の意見を受けます。主治医が変更になった場合など4ページ目が複数に分かれるときは、申請期間を分けて申請します。その場合も、1ページ目から3ページ目はそれぞれ記入が必要です(協会けんぽの場合)。
状況によって追加で必要になる添付書類
基本の申請書に加えて、状況に応じて次のような書類が必要になることがあります。
- 過去12か月以内に転職や記号番号の変更があった場合:健康保険加入状況等申告書
- 障害年金・老齢年金を受給している場合:年金証書や年金額改定通知書のコピー(併給調整のため)
- 労災の休業補償給付を受けている場合:休業補償給付支給決定通知書のコピー
- 交通事故や暴行など第三者の行為による傷病の場合:第三者行為による傷病届、事故証明書等
- マイナンバーを記入する場合:マイナンバーカードのコピー、または番号確認書類+身元確認書類
不要な書類を余分に添付する必要はありませんが、該当するのに漏れていると、それだけで審査が止まってしまいます。
申請から振込まで、どれくらいかかる?
協会けんぽのよくあるご質問では、審査の結果お支払い可能であれば、受付から10営業日以内にお支払いすると案内されています。記入内容に不備があれば当然その分延びます。初めての申請で「いつ振り込まれるのか分からず不安」という場合は、待期期間の完成状況や必要書類が揃っているかを、まず自分でチェックしてみてください。
振込を待つあいだに、退職や転職を考えている方は、傷病手当金の受け取り方と、退職後の失業保険で損しないための知識もあわせて読んでみてください。休職中から退職後までの流れが整理できます。
不支給になりやすいケースにも要注意
書類の不備とは別に、そもそもの要件を満たしていないことによる「不支給決定」もあります。特に注意したいのが、退職日当日に出勤してしまうケースです。退職後も傷病手当金の継続給付を受けるには「退職日に労務不能で、実際に休んでいたこと」が条件になります。挨拶や備品の返却のために少しでも出勤して働いてしまうと、退職日翌日以降の継続給付を受ける権利がなくなってしまうため、退職日の過ごし方には注意が必要です。
そのほか、休業中に給料が全額支払われている、労災の対象になる傷病だった、といったケースも不支給の対象になります。
もし不支給決定に納得できない場合
不支給決定通知書を受け取り、その内容に納得できない場合は、通知を受け取った日の翌日から3か月以内であれば、地方厚生局の社会保険審査官に審査請求ができます。医師の記載内容に事実誤認があった場合などは、修正意見書やカルテ開示資料を添えて審査請求することで、決定が覆るケースもあるようです。
なお、傷病手当金を受け取っている間の年末調整・住民税の扱いについては、休職中の年末調整・住民税はどうなる?傷病手当金の非課税扱いと注意点で解説しています。
申請のあとに気になること|次に読まれている関連記事
申請書類を出し終えたあとは、休んでいる間の過ごし方や、その先の働き方が気になる方も多いと思います。状況に合わせて、次の記事も参考にしてください。
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まとめ
傷病手当金の申請書類は、本人・会社・医師の3者が関わる分、記載内容の食い違いが起きやすいのが実情です。提出前に「休業期間の日付が全ページで一致しているか」「振込先口座が本人名義か」「状況に応じた添付書類が揃っているか」の3点だけでも確認しておくと、差し戻しのリスクをかなり減らせます。制度や様式は変更されることがあるため、申請の際は必ず加入先の協会けんぽ・健康保険組合の最新情報を確認してください。
傷病手当金の受け取り方全体については傷病手当金の受け取り方と、退職後の失業保険で損しないための知識【特定理由離職者】を、診断書のもらい方は適応障害・うつ病の診断書のもらい方と伝え方もあわせて参考にしてください。


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