適応障害やうつ病で休職・退職を経験すると、「障害者雇用枠」という選択肢が視野に入ってくることがあります。今回は、精神障害者保健福祉手帳を活用した転職・就労支援サービスの種類と選び方を整理します。
「就労移行支援」と「転職エージェント」、まず使い分けを知る
障害者雇用枠を目指す際は、体調やタイミングに応じて次の2種類を使い分けるのが現実的です。
- 就労移行支援:体調や生活リズムを整えながら、職業訓練や職場実習を通じて就職を目指す福祉サービス。ブランクがある人、いきなり働くのはまだ不安という人向け
- 障害者専門転職エージェント:すでに就労可能な状態の人向けに、求人紹介や書類添削、面接対策を行うサービス
医師から就労許可が出ていない、通勤や生活リズムがまだ安定していないという段階なら、まずは就労移行支援の見学から始めるのがおすすめです。すでに動ける状態であれば、エージェントに登録して求人を探す方がスムーズです。
主な就労移行支援事業所
代表的な就労移行支援事業所には、全国170拠点以上を展開し幅広い障害特性に対応する「LITALICOワークス」、実務訓練やビジネスマナー講座に強い「ウェルビー」、発達障害・精神障害を中心に自己理解や特性に合う仕事探しに強みを持つ「Kaien」などがあります。
「原則無料」と紹介されることも多いですが、正確には所得区分に応じた自己負担上限がある障害福祉サービスです(生活保護・住民税非課税世帯は0円、課税世帯は月額上限9,300円または37,200円)。利用前には、お住まいの市区町村の障害福祉窓口で「障害福祉サービス受給者証」の申請が必要になります。
主な障害者専門転職エージェント
転職エージェントとしては、非公開求人や入社後支援まで扱う「atGPエージェント」、書類・面接対策から定着支援まで一貫サポートする「dodaチャレンジ」、専任コンサルタントが伴走する「ランスタッド チャレンジド」、首都圏中心に展開する「DIエージェント」などがあります。いずれも求職者側の利用料は無料で、手帳保有者または申請中の人が対象です。対応地域やサービス内容には違いがあるので、複数登録して比較するとよいでしょう。
障害者雇用枠と一般枠、どう違う?
障害者雇用枠では、障害を開示した上で、業務量・勤務時間・通院・休憩などについて採用時から配慮を相談しやすいのが特徴です。事業主には、過重な負担にならない範囲で合理的配慮を提供する義務があります。ただし、求人数は障害者雇用求人に限定され、短時間勤務や補助的業務の求人も多く含まれるため、給与水準は低くなりやすい傾向があります。
ただし「障害者枠=低賃金」と決めつけるのは早計です。正社員求人や専門職・管理部門の求人もあるため、職務内容・労働時間・賞与・昇給実績などを比較して判断することが大切です。厚生労働省の令和5年度調査では、雇用されている精神障害者の平均月額賃金は12.9万円とされていますが、これは短時間勤務者も含んだ数値のため、自分の希望する労働時間や雇用形態を基準に求人を見るようにしましょう。
精神障害者保健福祉手帳の取得の流れ
手帳の対象は、精神疾患により日常生活や社会生活に制約がある人で、等級は1〜3級です。診断名だけで自動的に交付されるわけではなく、症状と生活・社会生活上の支障の程度を総合的に判断されます。
- 主治医に手帳申請の可否を相談する(原則、初診日から6か月経過後に診断書作成が可能)
- 市区町村の障害福祉窓口へ、申請書・診断書(または障害年金証書等)・写真を提出する
- 都道府県等の審査・判定を経て交付される
- 有効期間は通常2年。継続する場合は更新申請が必要
必要書類や審査期間は自治体によって差があるため、詳細はお住まいの窓口で確認してください。
まとめ
障害者雇用枠は、無理なく長く働き続けるための現実的な選択肢のひとつです。まだ体調に不安がある段階なら就労移行支援から、すでに動ける状態ならエージェント登録から、と自分の状況に合わせて一歩を踏み出してみてください。複数のサービスを比較しながら、自分に合った環境を探していくのがおすすめです。


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